「起業したいけど不安」という方へ伝えたい。救急医の私が 15 年も経った今になって起業を志す理由

「起業したいけど不安」という方へ伝えたい。救急医の私が 15 年も経った今になって起業を志す理由

はじめに

「起業」という勇気ある決断

決断

「起業したい!でも不安なんです・・・」

その気持ちわかります。起業するって不安定だし、実際に決意して新しい一歩を踏み出すのってとても勇気がいりますよね。「起業」という選択肢が、自分にとって正しい選択肢なのかわからない。悩みに悩み、結局安定を重視してそのままの自分で着地する方って多いと聞きます。
私は救急医です。医師になってからもう 15 年が経ちました。15 年もやると仕事でそんなに困ることも少なくなってきます。別に仕事が嫌いな訳でもありませんし、むしろ誇りを持ってやっています。家族もいて、このまま無難に人生を過ごせば、安定した悪くない人生が待っているような気がしています。そんな私ですがみなさんと同じように不安は感じながらも、15 年たった今起業を勇気を持って決意し、今年 4 月から fwywd(フュード;起業家の育成プログラム)へ参加しています。
起業に向けての最初の一歩を仲間たちと踏み出し始めました。
この記事は、
「起業したい! でも、その一歩がなかなか踏み出せない・・・」
そんな悩みを抱えている方に向けて書きました。私がなぜ 15 年も安定した救急医として歩んだキャリアを進んでいる今になって、不確定要素の多い「起業」への第一歩を始めることを決断したのか。自身の医療における起業に対する「思い」と、起業に至るまでの「体験」をお伝えすることで、読者の皆様の決断のヒントになれば嬉しいです。

人生の道半ばで、望まない最期を迎える患者がいるということ

「救急医療は社会を映す」と言われています。実際に、非常に多様な人生を生きてきた患者さんが身体的、精神的な問題を抱えて病院に搬送されてきます。私は救急医として、そのような患者さんの問題解決と向き合ってきました。治療が奏効して元気に回復していく患者をみることはとても嬉しいものです。しかし、一方で望まない病気や事故により、「まだ人生でやり残したことがある」と思いながら無念の最期を迎えたであろう人もまた、数えきれないほどみてきました。
彼ら彼女らの人生に思いを馳せると、医療の本質を考えさせられます。現実問題として、人間にはいつか最期の日が必ずやってきます。そこから逃げることはできません。しかし、皆必ず来るであろうそのエンディングに向けて、それぞれの思いと共に、人生という冒険をいいっぱい楽しもうと必死に生きています。私は、世の中の全員の人がそれぞれの人生を十分に楽しんだ後に、最期の言葉として「いい人生だった」と心から言える世の中であったら良いなと本気で思っています。冒険の道すがら、病魔や事故という突然の乱入者から皆を守ってあげることこそが医療者の使命です。

少しでも多くの人生を救うためにできること

川
救急の現場の医師として、一人一人の患者を診ては治療してを繰り返しているうちに、私は 1 つの気づきを得るに至ります。その気づきの源泉は、なぜ「こんなにもたくさんの困っている救急患者はやってくるのか」という疑問にありました。
ハーバード日本人教授のイチロー・カワチ先生は、社会医学者ジョン・マッキンリーの著書からの引用として、次のように述べています。
📖 「岸辺を歩いていると、助けて!という声が聞こえます。誰かが溺れかけているのです。そこで私は飛び込み、その人を岸に引きずりあげます」
「心臓マッサージをして、呼吸を確保して、一命をとりとめてホッとするのもつかの間。また助けを呼ぶ声が聞こえるのです」
「私はその声を聴いてまた川に飛び込み、患者を岸まで引っぱり、緊急処置をほどこします。すると、また声が聞こえてきます。次々と声が聞こえてくるのです」
「気がつくと私は常に川に飛び込んで、人の命を救ってばかりいるのですが、一体誰が上流でこれだけの人を川に突き落としているのか、見に行く時間が一切ないのです」
一人でも多くの人を助けたいなら、一人ずつ患者を診ることも重要だが、さらに医療の問題のもっと上流に目を向ける必要があるのではないか?」そのように考えるようになっていきました。

研究者としての挑戦と葛藤

「根本的な医療の解決が重要」と考えた私は、「患者を診る」ことから一度離れ、医学研究者としての挑戦を開始します。「医学自体を発展させることで、治る患者さんを増やすことができれば問題は解決するだろう」という思いからです。
これまでに、基礎研究(細胞や動物を使った研究)や臨床研究(医療データなどを解析し、医療の問題点や施策を検討する研究)を縦断して学び、いくつかの研究成果も達成してきました。しかし、研究者としての挑戦にも大きな葛藤がありました。それは、自身の研究成果が「実際の医療現場に何の良い変化も与えていない」ということでした。
医学研究は間違いなく医療の発展に重要なピースです。しかし、実際の医療現場を目で見えるレベルで変えられていない研究が多いのもまた事実です。自身の成果も例外でなく、「医療の上流をよくしたい」という達成したい未来像からは程遠く、葛藤を抱える毎日でした。

医療者がテクノロジーと手を取り合い進む未来

テクノロジーと手を繋ぐ
大きな枠組みでは、医療を自身の手では何も変えられていない中で、近年の DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が医療界にも押し寄せてきました。医療の外からやってきたテクノロジーの力は、これまでなかなか解決することが出来なかった医療の問題に、新たな解決策を次々と提示しています。まるで鎖国していた日本に開国を迫る黒船のようです。
医療をよりよくしたいなら、多くの人を助けられる未来が欲しいなら、私たちと共同しなさい
と迫ってきます。
医療の上流の問題を変えたいと試行錯誤してきた一方で、これまでの私は何も変えることができていません。長年の救急医としての経験や知識は持っているのです。自身でテクノロジーに触れ、学べば学ぶほどに、今こそ自身の救急医としての経験・知識とテクノロジーとが手を繋ぐべきではないかと思うようになっていきました。そして、目指していた医療の形、つまり「皆が最期に「いい人生だった」と心から言えるようにするための医療」を自身の手で叶えたいという思いが強くなっていきました。また、そのための最適な手段は起業をすることではないのかという思いが止められなくなっていきました。

私が起業への最初の一歩を踏み出せた理由

ジャンプ
ここまでの話で、なぜ私が起業への第一歩を踏み出し始めたのかがわかっていただけたかと思います。私が 15 年もたった今になって起業という選択肢を決断した理由、それは

自身の手で叶えたい「理想の未来」があるから

起業をするというのは手段であって、目的ではありません。起業するということが簡単な航海ではないのはわかっています。それでも起業という勇気ある一歩を踏み出せるのは、「自分が理想とする素敵な社会を自らの手で実現するんだ!」という思いが、その歩みを押し進めているのだと思います。

最後に

今年から私が参加したfwywdフュード)はそんな歩みを始めた仲間たちの集まりです。fwywd の仲間内では、自ら意思決定をし、多くの苦難を乗り越えながら叶えたい未来を自身の手で掴もうとする行動をした人たちを「fwywdy(フューディー)だね 👍」と称賛します。
もし起業への初めの一歩を踏み出せずに悩まれている方は、「今は存在していないけれど、自分が理想とする未来」を想像してみてください。
その未来を自分の力で叶えたいと心から思い、起業の一歩を踏み出す覚悟が決まった方へ。
fwywdy だね👍」

筆者について

profile
平野 洋平
医師(救急専門医・集中治療専門医)
救急医療の現場に身を置きながら、起業家としての第一歩を fwywd 1 期生として歩み始めました。すべての人がそれぞれの思う人生を最期まで十分楽しむことができる社会。医療の立場からそんな社会を実現したいと思っています。
私の記事に共感してくれた方、起業に興味がある方は是非フォロー 👍 をお願いします。

出典

  • 「命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業」イチロー・カワチ著/小学館刊 ※社会医学者ジョン・マッキンリーの著書からの引用