起業家必見!発想の転換で社会課題を持続可能なビジネスへ繋ぐ

発想の転換で社会課題を持続可能なビジネスへ繋ぐ

はじめに

株式会社キカガクの新規事業であるfwywd(フュード)が手掛ける起業家育成fwywd in 淡路の募集がついに始まりました。
この企画では、自身が抱える社会の課題と向き合う起業家を育成および支援していく、これからの日本の成長に欠かせない取り組みだと自負しています。 今月の 11/12(金)から募集を開始しており、続々と起業を志す優秀な方からの応募をいただいています。
この起業家育成の特徴である『社会課題』に関して課題意識はあるものの、どうやってビジネスに繋げていくと良いかわからないと悩んでいる人に向けて、この記事を書きました。
fwywd in 淡路

弱みには色眼鏡をかける

現代最強のマーケター 森岡毅さん

このヒントとして、先日 TV で放送されていた『日曜日の初耳学』での森岡毅さんの話がとても参考になります。
今週であれば TVer でも無料配信中ですので、ぜひ見てみると良いでしょう。

西武園ゆうえんちの復活劇

この番組内での話の1つとして、西武園ゆうえんちの復活劇がありました。
西武園ゆうえんちは設備として古くなってしまい、来園者数も年々減っていくという状況だったそうです。
消費者目線で考えるとわかりやすく、ディズニーランドや USJ が新しいアトラクションを年々増やしていく中、古くなっていく西武園ゆうえんちに行きましょうとはならないと思います。
つまり、西武園ゆうえんちの弱みは「古さ」。
これは変えることのできない事実であり、番組では変数でなく定数と解説されていました。
しかし、森岡さん流のしかけは一味違いました。
弱みには色眼鏡をかける
古さという弱みを昭和を感じるノスタルジーに変える戦略を立てたそうです。
そして、出来上がった西武園ゆうえんちの入り口がこちら。
この入口で昭和感を演出してノスタルジーを感じさせることで、この入口を通った後に構える古い遊園地の設備が一気に懐かしいと、ポジティブな感情に変わります。
色眼鏡で一気に魔法をかける。
これが森岡さん流の巻き返しの戦略であり、西武園ゆうえんちはここから入場者数が飛躍しました。

社会課題をどのようにビジネスへ繋げるか

fwywd in 淡路の選考内容

さて、ここからが fwywd(フュード)in 淡路 に参加して起業したいと考えている方向けの話になります。
この1次選考の書類選考では、以下の3つを考えて答えていただきます。
  • 原体験から考える社会の課題
  • 過去に遭遇した最大の困難と乗り越えた方法
  • 本プログラムに参加した1年後のあなたの姿
この中で最もオリジナリティが出るのが最初の問である「原体験から考える社会の課題」です。
この点への自身の当事者意識、課題意識の強さを聞きたいと言っても過言ではありません。

社会課題をビジネスに繋げる難しさ

そして、応募していただいたみなさんが素晴らしい社会課題の問題提起を行っていただいています。 ただし、どうしてもみなさん難しいと悩まれているのが、社会課題の解決をどのようにビジネスへ繋げていくかです。
もちろん社会課題である以上、補助金や寄付を前提とした方法もあるかと思いますが、できれば社会課題の解決を行うことでビジネスが成立するようなアイディアで攻めてほしいと私は考えています。
この理由として、補助金などでは制約が多く成長が鈍化する一方で、資本主義社会が加速する現代において、ビジネスとしてこの波に乗ることができれば、一気に大きな課題解決までたどり着くことができます。
※ 着火剤として補助金などのお金を活用することは良いと思います。

社会課題は弱者を守るという発想が多い

応募者から上がる内容は「介護」「医療」「地方」など、誤解を恐れずに言うと弱者の立場に対する課題感があります。 自分自身やその家族や身近な方が社会的に弱者の立場に立たされたときこそ、どうしようもない課題を感じ、これを解決したいと人生を考え始めるものです。
さらに一歩進めると、多くの方の思考の幅を狭めているのが『弱者を守る』という発想です。
この発想は人として優しいため応援したいのですが、おそらくビジネスとしては成立できないと予想しています。

ビジネスが持つ当たり前のルールに従う

ビジネスとは得られた対価に対して報酬を支払う』という誰もが知る当たり前のルールが存在します。
したがって、『守られる』という立場はお金をもらえる側ではなく、お金を支払う側になります。
弱者を守りたいと思う気持ちは、ビジネスと逆行しているのです。
だからこそ、声を大にして伝えたいのが、森岡毅さんの発想です。
色眼鏡をかけて、弱みを強みに魅せる。
守りたいと思っている人の弱みをどのように魅せていくと強みに変わっていくのか。
もし、それを強みに変えることができれば、お金を支払ってもらえる側になり、社会的な立場が向上するはずです。
真の守るとは強みに変わるように『プロデュース』をすることではないでしょうか。

教育者を目指す人を増やしていきたい

筆者の実体験へ

さて、ここからは私の実体験になります。
私が 2017 年に創業した株式会社キカガク は、AI・機械学習を含めた研修事業を主に社会人向けに行っています。
ありがたいことに現在では受講生数が 50,000 人を超え、受講企業社数も 500 社を超えるまでに成長しました。
大型の資金調達を行うことなく、基本的には自己資金だけで成長を続けていき、現在では 35 名程度の会社です。

AI から教育への舵切り

キカガクでは AI など最先端領域の技術を取り扱う一方で、本当は『教育』に対する想いが強い人が集まっています。
これは創業してから数年が経った頃に、私がこの会社が解決すべき課題は AI ではなく教育だ!と大きく舵を切ったことが始まりでした。
理由は以下の記事で色々と書いているのですが、大きくは日本社会の発展に不可欠な教育者という仕事を、現状の働く環境では誰も教育者をやりたくない将来がくると危惧したためです。
肉体的拘束、精神的拘束、給与の低さ、新しいことに挑戦できる環境。
どれも揃っているとは思えなかったことが、この舵切りのきっかけになりました。

教育者を守りたい

母が国語の教員であったこと、そして私も社会人向けではあるものの人に教えるという仕事に携わっていたこともあり、この教育者を目指す人を増やしていくことこそ、自分が考える社会課題でした。
人間関係も良好で、新しい知識を学ぶことができ、待遇も良いような環境。
まだまだ現状では理想論ではありますが、いつかこんな環境を作っていきたいと『教育』に向き合う会社になりました。

未経験採用は強みになる

まず最初に教育の問題を解決していくために取り掛かったのが採用の見直しです。
ゆくゆくは教育をより良い方向に変えていきたいのですが、まずは会社として強くならねばなりません。
ここで私が最初に考えた戦略は『未経験採用』でした。
未経験とは本来弱みに見えるかも知れませんが、私はこの弱みを強みに転換できると考えました。
これまで AI を含めた先端技術領域では教える側の研究業績や学歴、職歴などが重要視される傾向が強くありました。
もちろん、この軸で選ぶことも悪くはないのですが、新しい分野の初学者にとって本当に良い教育者とはどのような人だろう。
それは等身大で教えてくれる人であり、権威を持った偉い先生ではありませんでした。
初学者のうちは理解できることも限られており、難しい言葉を使う人よりも、同じ経験を通して易しい言葉で伝える人の方が適任です。
当然、未経験採用を宣言した最初のうちは「本当に大丈夫?」と他社へ流れてしまうことが多々ありました。
それでも、数年が立つと『知識量の多いだけの人よりも、わかりやすく教えてくれる人の方が評判が良い』と当時他社へ流れていた研修が次々と帰ってきました。
弱みを強みに変えることができた一歩目でした。

育つ環境は構造で作る

キカガクの未経験採用でも圧倒的に成長するための戦略があります。
それが『最初からプロジェクトをひとりで完遂させる』ことです。
キカガクでは基本的に講師としての入り口で採用されることが多く、ここからセールス・マーケティングに行くこともあれば、コンテンツ開発に携わる人もいます。
どの部署に行くかは入社後に相談して決まるとして、基本的には最初は全員が講義を担当します。
そして、その講義を先輩の後ろでサポートに入るのではなく、研修期間を終えた入社後の一番はじめの仕事が『メイン講師としての講義』です。
丸々3日間の講義を1人で基本的には行います。
入社直後にメインで講義をするというプレッシャーは凄まじいものですが、この仕掛けが飛躍的な成長に繋がると思っています。
1人で講義を担当すると、お客さんから支払っていただいている金額を明確に自分の売上として意識することができます。
自分の売上を把握することができれば、自身の市場価値を定量的に考えるきっかけができます。
また、売上を作り出しているという心理的な安全性が生まれ、社内向けの発言も行いやすくなります。
積極的な発言が自社ビジネスへの当事者意識を高め、さらに良い施策を提案して、次の価値を発揮できます。
このように、売上に貢献していることの心理的安全性が成長の好循環を生むと私は考え、創業初期から社内教育の一環として今でも取り入れています。
講義の質はこれで確保できるの?と質問もありますが、この点は今まで問題になったことがありません。
経験豊富な先輩の講師が(逆に)サポートに入ることで難しい質疑応答があった場合でもフォローすることができますし、入社試験では何度も厳しいフィードバックを受けています。
厳密には先陣が築き上げたレールの上に乗っているのですが、売上に貢献している安心感は社会人にとって成長のトリガーになるのです。
未経験という弱みを強みとなるようにプロデュースし、成長できる環境を構造的に作る。
本当に教育を変えたいと思うからこそ、慣習的な教育に対する考え方にメスを入れることになりました。

おわりに

今回は森岡毅さんのマーケティング戦略をヒントに、社会課題の解決をビジネスに繋げていく方法について考察しました。
弱者を守る』と考えがちな社会課題の解決を『弱者の強みをプロデュースする』という発想の転換こそ、関わる人をすべて幸せにできる戦略ではないでしょうか。
これから素晴らしい社会課題に挑戦される方の一助に少しでもなっていれば幸いです。
今回もご一読いただきまして、誠にありがとうございました。
株式会社キカガク 代表取締役会長
吉崎 亮介
twitter: @yoshizaki_91