はじめに
現在、起業家育成コース『
fwywd(フュード)in 淡路』の立ち上げにあたり、これから起業を志す
起業家の卵のアイディアを壁打ちする機会があります。
地方、
医療、
介護、
教育格差など社会課題の解決を目指し、戦う姿を日々見ることができます。
さて、話は変わりますが、私は好きになれないタイプの人がいます。
1つ目は『他人の批判はするのに、自分は行動しない人』です。
そして、もう1つは『儲からないのに夢だけ語る人』です。
前者に関しては理解が容易かもしれませんが、私は後者の罪も大きいと感じています。
この『儲からないのに夢だけ語る人』が生まれやすい領域が社会課題です。
教育格差をなくすために、無料で小中学生向けにプログラミング体験会などを開くといった話をよく聞きます。
その行動自体は素晴らしいことだと感心していますが、ここで少し立ち止まって考えてみませんか。
『儲からない社会課題ビジネスにおける最大の被害者は誰か』
ストーリー
今回は身の回りにある話をまとめ、ストーリー仕立てで紹介します。
この話はあくまでフィクションです。
起:困っている人を助けたい
小学生にもプログラミング教育が必修となる社会を迎え、地方に住んでいた A 子さんは東京などの都市部との教育の格差を感じていました。
自分の子供にはなるべく良い教育を受けさせたいと都会に移り住むことも考えましたが、これは自分たちの家庭だけでなく、多くの地方が抱える問題であると気づきます。
この社会課題を解決すべく、憧れだった起業をしてみるのはどうだろうか。
自分たちを含めた困っている人を助けたいというピュアな思いが A 子さんを突き動かしました。
承:人に教えることの楽しさ
知り合いに話をすると、空いているスペースを無料で貸していただけることに。
地方が抱える課題を解決しようと志す A 子さんには多くの味方がいました。
友達のお母さんにも話すと、運営をぜひ無料でも手伝いたいと申し出があり、順調なスタート。
最初はどんな風になるかわからないし、お試しなので、参加も無料で計画を開始。
運営スペースや人件費もかからないので、黒字にはならないけれど、赤字にもならないので OK。
TV や YouTube で誰もが英語とプログラミングを学んだ方が良いという時代。
同じ小学校の生徒にクチコミで広がり、あっという間に定員が満席。
イベントも準備は大変でしたが、結果は大成功。
自分の子供が喜んでくれたことは当然嬉しかったのですが、想像以上に人に教えるということの楽しさを実感できました。
転:無料と有料の見えない壁
お試しでは無料で開催したものの、次はビジネスとして成立させるべく動きます。
今回、こんなに喜んでもらえたので、プログラミング塾としてもいけるだろう。
小学生の塾は月謝が 20,000 円でも高い方なので、1 人 10,000 円としよう。
20 人を受け入れるとなると、サポートが必要なので、知り合いのお母さんには時給 1,500 円でお願いしよう。
過去のイベントの成功がビジネスへと加速させていきました。
知り合いのお母さんは負担がそこまで大きくならないならばと承諾をしてくれました。
体験イベントへ参加してくれた家にプログラミング塾の話をすると、思いのほか、反応がよくありませんでした。
無料と有料には雲泥の差があり、この点を楽観視していたのです。
結果的に、無料のイベントに来てくれた 3 人がプログラミング塾に入会してくれることになりました。
結:持続可能なビジネスを成立させる難しさ
想定以上に少なかった入塾者により、初月の売り上げは 30,000 円。
知り合いのお母さんのパート代が 12,000 円で、場所代が 50,000 円。
自分の給料を払うどころか、30,000 円以上の赤字です。
しかも、知り合いのお母さんも日によっては行けないこともあり、日程の調整が大変。
苦労している上に赤字で、子供達も慣れてくると勉強を嫌がり、モチベーションを維持させるのも大変。
こんなことなら、このビジネスを始めなければ良かった。
そして、この3ヶ月後、結局うまく軌道に乗せることができずにビジネスを閉じることを決めます。
入塾してくれていた子供達は中途半端にしか学ぶことができず、結局、地方の教育格差は解消されないまま。
むしろ、プログラミングでできることが分からずじまいで、プログラミングへの印象が悪くなってしまいました。
儲からないビジネスの最大の被害者はユーザー
社会課題は戦略なしでは解決できない
このストーリーでは極端な展開としていますが、私の周りでは近しい話をよく聞きます。
教育の格差という社会問題があるから『志』だけの無計画で始めてしまう。
戦略がないから、結局続かない。
そして、最終的にはそのツケはユーザーへ回ってくるのです。
これが冒頭に述べた『儲からないのに夢だけ語る人』の正体です。
使命感で燃えているのは結構。
ただでさえ難しい社会課題の解決には『戦略』が不可欠です。
ボランティア精神とか奉仕の心とか、そんな甘えでは変えられないぐらい深い闇を抱えているのです。
社会課題をビジネスに変換
では、まず社会課題を解決するためには何をするべきか。
それは、社会課題をビジネスへ変換することです。
この問題設定の変換を正しく行うことができれば、『課題を解決する = 儲かる』の構造が出来上がります。
儲ける構造ができあがれば、関わる社員の待遇を改善することができます。
社員が学べる余裕も作ることができ、成長を促すことができます。
待遇が良いと能力の高い人から応募もきます。
つまり、『儲かる』とは好循環の始まりなのです。
では、どのように社会課題をビジネスへ変換すると良いのでしょうか。
押さえるべきは2つだけ
ユーザーの課題解決
私は起業した最初に Kaizen Platform の須藤さんの起業家向けの講演を聞く機会があり、これが今でも本当にラッキーだったなと思います。
直接の面識はないので予想ですが、須藤さんはリーンキャンバスのような細かいフレームワークを埋めるのは面倒で、ぶっちゃけこの2つを押さえておくと良いよと教えていただきました。
その1つ目がユーザーの課題解決です。
『誰の』『どんな問題を』『どうやって』解決するか。
まず、ビジネスアイディアを考えるときには、この3つを文章でまとめるようにしています。
これは社会課題を考えるときに多くの人が頭の中で思い描いているため、書き出すことは難しくないはずです。
つまり、多くの人はこのユーザーの課題解決は考えられている一方で、何かが欠けてしまっているのです。
ビジネスの課題解決
絶対に忘れてはいけないのがビジネスの課題解決です。
ユーザーの課題が解決できたとしても、ビジネスとして課題が解決できていなければ、冒頭で紹介したストーリーのように遅かれ早かれ縮小してフェードアウトしていきます。
ビジネスの課題解決では『誰の』『どんな予算を』『何と比較させて』ひっくり返すか?を考えます。
お金を出す人は誰か。
どんなお財布があるか。
競合や他に使っていたお金をどうやって自分の方に引っ張ってくるか。
特に『何と比較させて』というところが肝です。
起業をして新しくビジネスを開拓するときには、もともと使われていたお金なんてなくても、財源も新たに開拓してやる!と意気込むかもしれません。
知名度と信用があれば実現可能かもしれませんが、実際には新しい財源を確保することは非常に難易度が高いのです。
だからこそ、現在すでに通っている川の水(財源)をどうすれば自分の方に引っ張ってくることができるのか。
これが答えられない限りはビジネスではないというわけです。
この『ユーザーの課題解決』と『ビジネスの課題解決』の2つを答えられるように設計することで、『社会課題 → ビジネス』へと変換されるのです。
ビジネスとして儲かる仕組みがあれば、持続可能な成長へと繋がり、より大きな課題解決が可能となります。
おわりに
絶対により良い方向に導いて欲しいからこそ、社会課題の解決には戦略を。
志半ばで諦める人を見てきたからこそ、生優しい言葉は掛けません。
社会課題をビジネスへと変換し、儲ける仕組みで課題を大きく持続可能に解決していって欲しい。
最後に、社会課題に注目している人に欠けている能力の1つである『儲ける力』。
これを補うことができる本を紹介します。
この書籍自体は社会課題の解決という観点はなく『儲ける』ということに終始しています。
私はとにかく儲かればそれで良しとは思わないため、少し意に反するところもあります。
しかし、それよりも意に反するのは『儲からないのに夢だけ語る』ことです。
本当に社会課題を持続可能な形で解決したいのであれば『儲ける』ということも正しく勉強して、その力を良い方に使えるようになってください。
今回の記事で、社会課題を解決するべく起業への思いが奮い立った方は、ぜひ私と一緒に起業を志しましょう!
淡路島から始まる挑戦に最高な1年間を提供する『
fwywd(フュード)in 淡路』でお待ちしています!
今回も長文にお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。