起業家に必須のピッチ。投資家視点でわかった押さえるべき2つのポイント

起業家に必須のピッチ。投資家視点でわかった押さえるべき2つのポイント

はじめに

概要

起業をすると何度も訪れるピッチのチャンス。
なぜその事業に取り組むのか、なぜ私なのか。
これを5分程度で端的に伝え、投資家に出資したいと思ってもらえるか。
起業家として活動していると起業家視点でしか物事を見ることができません。
ピッチする側の起業家視点と聞く側の投資家視点は結構違います。
投資をする側の見え方を知るからこそ、適切な情報提示の設計ができるはずです。
今回は投資家視点で押さえるべき2つのポイントを紹介します。

想定読者

  • :起業初期でこれから投資家向けにピッチの機会が控えている人
  • :これから起業を考えており、そのために1つでも多くリアルな情報収集がしたい人

要約

時間がなくて先に結論を知りたいよ!という忙しい方向けの要点まとめです。
要点も大切ですが、このポイントをなぜ押さえておくべきかといった背景の理解がより重要ですので、それぞれをさらに深堀りして紹介しています。

1. 評価コストを下げる

  • あなたが思っている以上に聞いてもらえていないことが多い
  • 聞くに値する人間/チームであることをなるべく早く伝えるべき

2. 価値を上げる

  • 聞くに値すると分かれば、あとはワクワクさせて欲しい
  • 私以外の関係者を説得できる材料(Why me?, マーケット、タイミング、出口戦略など)が欲しい

記事の背景

押さえるべきポイント2つの前に、筆者である私がどのような活動をしており、なぜこの記事を書くに至ったのかを紹介します。

自己紹介 & 事業紹介

yoshizaki
私は株式会社キカガクで代表取締役会長をしている吉崎と申します。
2017 年に社会人向けに AI の技術を教える教育の会社を立ち上げ、現在 6 期目で社員は約 50 名、現役の起業家です。
現状のビジネスモデルはスモールビジネス型で協力会社からの出資は少し受けていますが、スタートアップ的な資金の入れ方はしていない状況です。
自身の起業家の経験を活かし、さらに広い領域の教育を手掛けたいと現在は起業家育成を新規事業として行っています。
この起業家育成の新規事業がこのメディアでもある fwywd(フュード) です。
もちろんメディア事業だけでなく、実際に受講生もとって 2022 年 4 月から 30 名程度の起業家の卵と日々、事業作りに奔走しています。
【次期受講生募集】起業家精神 × 学び方改革 = fwywd(フュード)| 挑戦しないことがリスクになる時代へ

起業家で集まってピッチコンテストを開催

この 4 月から始まっている fwywd 内のメンバーだけで 5 分間で伝えるピッチコンテストを練習として行いました。
普段は起業家として投資家や営業先に対して話をすることが多いメンバーに逆の立場を知ってもらうための機会でもありました。
私にとってはどのようなピッチであれば投資をしたいと思うのだろうと投資家の視点を具体的に知りながら抽象化していく機会でした。
※ fwywd のメンバーは弊社キカガク含め関係者から出資を行う予定です。

投資をしたいと感じる人の正体とは...?

fwywd メンバーは 4 月から活動を本格的に開始し、法人登記をしたばかりで、これから本格的にサービスを作っていくシード期と言えます。
VC で投資家をしている友人に「シード期は事業ではなく、人に対して 9 割以上の重きを置いて見ている」と聞いていました。
シード期の事業ピボットは経験が浅い人にとっては当たり前のことだからこそ、変わる事業よりも変わらない人というわけです。
そこで、人を評価するとはどういうことで、どういった人は魅力を感じ、逆にどういった人は魅力を感じないのか。
その魅力をどこで何に対して感じるのか。
こんな視点で漠然とした「投資をしたいと感じる人」とは何か?を探る機会でした。
多くの人が知りたいテーマだと思います。
まだまだ主観が大きく入り抽象度も甘く、一般論というよりも吉崎論であることを前提で良ければ、どんな人に投資をしたいと感じたかを紹介していきます。

ポイント 1. 評価コストを下げる

あなたが思っている以上に聞いてもらえていないことが多い

投資をしたいと感じる人という正体を探っていく際に、どのような人が魅力的だろう...?? という議論がなされると予想した方が多いかと思います。
しかし、ピッチを聞いてすぐに感じたことがあります。
それは「聞く価値ないな」ということです。
投資をしたい人というのは、もっと解像度を上げて正体を探る必要がありました。
話を聞いても良い → 投資をしたい
この2つのステップを経て投資をしたいに至ることを起業家視点では気づけていませんでした。
投資家の方は数多くのピッチを聞く機会があり、そのほとんどが投資に繋がりません。
人の話を真剣に聞き続けるというのは体力を使うため、省エネモードで人の話を聞いている人も多いと予想しています。
だからこそ、最初に話を聞いても良いに立って、投資家を本気で聞いてもらうモードに入れないといけません
おそらくこの話を聞いてもよいの段階に進める人が 100 人いれば 30~40 名ほどではないかと予想しています。
そうなると、事業の価値を語って納得してもらうよりも、もっと大きなボトルネックが「話を聞いても良い」をクリアできないことなのです。

聞くに値する人間/チームであることをなるべく早く伝えるべき

起業家は投資家に話を聞くに値する人間やチームであることをなるべく早く伝えるべきなのです。
起業家としては映画のストーリーのように、伏線を序盤で張って、どんどん伏線を回収していき、最後にクライマックス!と思ってピッチを設計している人も多いと思います。
今回のピッチコンテストでもほとんどが同様の設計でした。
しかし、これが勘違いなのです。
最初の1枚目のスライドで「私の話は聞くに値しますよ!」と主張して納得してもらえないと、それ以降のスライドにはほとんど関心を示されないのです。
起業家がドラマのクライマックスを話したつもりが、投資家は一緒にそのクライマックスを迎えてもらえるとは限らないのです。
ここで押さえるべきポイントが評価コストを下げること。
知らない相手を評価することは非常に高いコストがかかるということが重要です。
社員の採用ですら失敗を繰り返すのは短い時間で相手を評価するということの難易度が非常に高いためです。

投資家は評価するコストを下げたがっているニーズ

だからこそ、相手の評価コストを下げてあげる工夫がずばり重要です。
そして、ここでまずわかりやすく評価コストを下げるのが学歴、そして職歴です。
例えば、私は「26 歳から東大の先生をしています」と、たった 5 秒で伝える情報で多くの人が目の色を変え、話を真剣に聞いてもらえる恩恵を何度も受けてきました
ちなみに、私は学歴や職歴を全面に出したコミュニケーションは個人的にはあまり好きではありません。
それが人の本質ではないと考えているためです。
それでも、起業家として自分のこだわりの事業も話を聞いてもらえないと、結局なんのスタートラインにも立つことができません。
話さえ聞いてもらえれば、自分の本当に大切にしている価値観などを伝えられる
だからこそ、たとえ好ましくなくても評価コストを下げるために学歴や職歴など、自分の本質ではなくても、わかりやすく評価しやすい情報が最初に必要なのです。

相手を納得させる短いパワーワードを見つける

ここで私の自己紹介を再掲します。
それが自分の本質ではなかったとしても、まず最初に相手に話を聞くに値する人間であることを主張します。
東大の先生です。
yoshizaki
もちろん学歴や職歴にコンプレックスがある人も多いと思います。
それでも、何か光るものがあるはずです。
このヒントは上司や友人からなんて紹介をされているか?
「彼ってボディビルダーやってたんですよ。」
「フレンチのシェフでソムリエの資格もあるんですよ。」
「高校を卒業して起業に挑戦しているんです。」
紹介された人の目の色が変わる瞬間を逃さずに観察していれば、自分のブランディングの方向性は案外簡単に見つかります。
みなさんの話を聞く価値を与えるパワーワードは何でしょうか。

ポイント 2. 価値を上げる

聞くに値すると分かれば、あとはワクワクさせて欲しい

聞くに値すると評価されるポイントをクリアできれば、あとはよく投資家の人が欲している情報を提示していけば OK です。
また、投資家は起業家とコミュニケーションを密にとることになるため、一緒に仕事をしたいと思ってもらえる雰囲気を伝えることも大切です。
私の主観ですが「なぜあなたが取り組むのか?」は絶対に外せないポイントです。
人生とは限られたリソースをどこに投じるかの戦略が必要であり、すべての選択肢を実施することができません。
私が「教育」という領域に張っている限り、他の領域にはほとんど手を出すことができません。
だからこそ、起業家としては未熟であったとしても、私よりも選択される領域の課題を解決できる可能性が高いのです。
逆にビジネスとしてうまくいきそうといった視点だけだとすると、もっと経営のうまい人がやれば良いだけでは...? と感じるわけです。
あなたが取り組むからこそ、うまくいく理由が常に欲しく、それに納得できると投資家としてワクワクします。

私以外の関係者を説得できる材料が欲しい

それから最後にマクロに見て確実に必要な情報です。
投資家はめちゃくちゃ簡素化して見ると、投資したお金が「いつ、どのくらいになって返ってくるのか?」を知りたいです。
だからこそ、シード期の走り始めとは言え、Exit の想定なども当然聞きたい情報です。
投資家が関係者を説得するために欲している情報は VC の投資家の方から発信がされているため、参考にすると良いでしょう。
大久保洸平さん(Z Venture Capital)の VC の投資基準 8 選 〜VC との MTG を Hack する〜 では、シード期は「タイミング」「チーム」「市場」の素晴らしさを伝えて欲しいとありますね。
私の友人の VC から紹介してもらったおすすめのチェックした方が良い情報はこちらです。
VC の友人推奨の参考リスト

おわりに

何事も相手の立場に立って考えてみる。
小学校の道徳で習った当たり前のことが当たり前でなかった反省を綴りました。
起業家視点で凝り固まりがちな考えから脱却できる良い機会になりました。
起業家とは投資家以外にも市場との対話の日々で立ち止まって考えを整理する機会が日に日に減っていきます。
一方で、戦略を間違えると、その後の努力が水の泡になることもよくあります。
この記事がみなさんの一歩を少しでも支援できましたら幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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