新しい事業の名前を付ける上で必要な2つの制約とは?

 2021/05/18
naming

はじめに

みなさん、こんにちは。
株式会社キカガクの吉崎です。
昨日公開することができたこちらの fwywd という事業ですが、"For what you wanna do" の頭文字をとって名付けました。
新しい事業と命名というのはセットで存在し'ますが、いまだに名前を付けることの難易度は高いと感じます。
そうとは言え、これまで『キカガク』『teache4me』『ikus.ai』『fwywd』といくつかの名前を付けてきたため、命名を未経験の方よりは少しは名前の付け方がわかってきたように思えます。
そこで今回は、事業の肝といっても過言ではない『名前の付け方』の手順を紹介していきます。

名前の付け方の2大制約

まず結論から先に紹介すると、コンセプトが浮かぶような名前を複数個リストアップした後に以下の2つを調べて絞り込んでいきます。
  1. 理想のドメインは取得できるか?
  2. 商標登録は取得できるか?
調べやすい順番になっているため、いつもこの順番を通っています。

前提:コンセプトに合いそうな名前をリストアップ

絞り込みの作業の前に、名前を複数個リストアップする必要があります。
ここの作業はそれほど悩まずに、お風呂に入っている時など連想されるキーワードをまずは列挙していきます。
そこからキーワードを繋げ合わせたりして、イメージを膨らませていきます。
名前というのはサービスを覚えてもらうための User Interface (UI) の役割を果たすものであり、読みにくい、覚えにくい、といった特徴がある場合は良い名前とは言いづらいかも知れません。
TOYOTA, HONDA といった名字をとったものは覚えやすい一方で最近は少ないため、キカガクといった短めのものがオススメです。
知名度が全くない中で、創業した会社にキカガクという名前を付けるときに考えていたことは、以下のことを意識していました。
  • 略されない
  • 読み間違えない
  • 業界が連想できる
AI 系ではアルファベットで長い名前もあるのですが、人によって略し方が異なる場合がありました。
同じものを指している中で人によって呼び方が違うのは名前の UI として良くないと感じていたため、この点を解決するために『4文字』と最初に制約を決めました。
4文字の言葉をなかなか略して呼ぶ人には出会わなかったからです。
例えば、「カラオケ」「アイドル」「エンジン」「スイッチ」などの言葉をさらに略して呼ぶ人は少ないはずです。
むしろ、日本語で何かの単語を略すと大体4文字になるため、4文字というのは音の長さがちょうど心地良いと感じます。
次に、難しい漢字を入れたり、難しい英単語を入れると人によって読み方が異なる場合もありました。
漢字よりも英単語の発音間違いで読み間違えている場合、名前の付け方を難しくしたために、名前を呼んでくれた人に恥をかかせることに繋がります。
そこで、カッコ良さという観点では難しい漢字を使ったり、英単語を使う方が良いのはわかっていますが、『カタカナ』を選ぶことにしました。
最後は業界の連想です。
知名度がない場合には、会社名を出すだけでもサービスや事業領域が連想できることが大事です。
キカガクは機械学習の略として名前を付けたのですが、他にも数学の幾何学も連想されます。
この名前がうまく相まって、初見で聞いた人にも覚えてもらえるようになりました。
fwywd(フュード) ではなく、キカガクの名付けの方法を紹介しました。
なぜならば、キカガクは知名度が全くない中での考え方であり、これから新しく事業を作っていきたい方の事業と近しいためです。
逆に、fwywd はキカガクとしてある程度の認知度がある中で名前を考えたため、抽象度を高めた名前としました。
業界が連想できることは良いことである一方、領域が縛られてしまうというデメリットもあります。
fwywd では機械学習という領域に縛られることなく、幅広い領域で展開していきたいという思いから抽象度を高めました。
最初は伝わりにくいかも知れませんが、すでに持っている知名度を活用することで、**fwywd(フュード)**という名前を浸透させるまでアピールを続けることができます。
まとめ:名付けのポイント
  • 知名度が低い場合
    • 略されない
    • 読み間違えない
    • 業界が連想できる
  • 知名度が高い場合
    • 抽象度が高い
    • 事業の幅が広がることを想定
    • 音の響きが心地よい
さて、次からはこのリストアップできた名前を絞り込んでいく本題に戻ります。

1. 理想のドメインは取得できるか?

リストアップされた名前の中で理想的なドメインが取得できるかを調べてみましょう。
Google Domainsお名前.com を使うと良いでしょう。
ドメインの後ろに付くものは決まりではありませんが、私は以下のように絞っています。
  • 企業ページ
    • 日本のみで展開:***.co.jp(日本で登記が必要)
    • 海外も視野に入る:***.com
  • Web アプリケーション
    • 日本:***.jp
    • AI 系:***.ai
    • IT 系:***.io
***.ai***.io は海外のドメインですが、AI や IT 用語と紐づいて好んで利用されていることがあります。
今回の fwywd (https://fwywd.com) は海外を視野にいれているため、***.com にこだわりました。
***.com は企業サイトやアプリケーションまで幅広く利用することができるため、個人的にはイチオシです。
その代わり、当然人気が高いため、***.com で希望のドメインを取得することはかなり難しかったりします。
ドメインは企業名と同じく長く付き合っていくものであるため、妥協なく取得できるものをお勧めします。
たまに、変なドメイン名を見ると、実際どうかわかりませんが、その事業への妥協を感じます(かなり主観だらけですが...)。
ドメインの取得は1人で簡単に調べることができるため、この点を一番最初にチェックしておくと良いでしょう。

2. 商標登録は取得できるか?

ここからは他の人の力を借りることになってきます。
自分で考えて気に入った名前だからと使っていると商標権侵害で訴えられることがあるため、ここもきっちりと押さえておきましょう。
特許庁が公開している J-PlatPat で希望する名前の商標登録がされていないか確認しましょう。
jplatpat
ここで注意すべき点は呼称と呼ばれる発音で商標が決まるため、スペルが違っても同じ発音のものは商標登録ができません。
そのため、漢字やアルファベットの場合もカタカナで検索してみて、呼称の被りがないかをチェックしましょう。
また、呼称が被っていたとしてもすぐに諦める必要はなく、区分と呼ばれる事業を展開する領域が被っていなければ商標登録ができる可能性が高いです。 呼称区分をしっかりと確認ですね。
キカガクのように、呼びやすく短い名前を選択した場合の落とし穴として、一般名称として利用されているものは商標登録ができない場合があります。 キカガクも一般的な幾何学という用語が存在するため、この単語で商標を取ることができてしまうと、世の中の『幾何学』という単語を使う方が商標権の侵害になってしまいます。
試しに申請を試みましたが、商標登録は却下されました。
その場合の対策として、文字だけの商標登録でなく、ロゴ(図形や記号)として商標登録する方法があります。
文字だけの場合と比較すると効力の範囲が弱まってしまうことは確かですが、自社のロゴの権利を守ることができます。
もし商標登録をしておかずに、誰か悪い人にロゴを商標登録されてしまうと、作ったはずの本人が商標権侵害となってしまいます。
商標登録は自分の知的財産であることを確かにするためのものであるため、文字だけの商標登録が難しい場合でも諦めずに方法を考えましょう。
jplatpat2
現在、fwywd も商標登録の申請段階にあります。
J-PlatPat で調査を行うことは素人でも行うことができるため、まずは自分の力で調べて検討を付けておきましょう。
ただし、これ以降の申請は自力でも可能ですが、なるべく弁理士さんにお願いする方が良いでしょう。
申請書類に必要な用語などが不慣れではわかりにくいものが多く、素人では申請に割く時間に対してコストが見合わないはずです。
また、私の場合は、自分で調べて大丈夫そうだとある程度見込みを付けたのち、弁理士さんに事業の内容など全体像を説明して、申請に問題がなさそうか再度確認をしていただいています。
ここまでの相談は基本的に無料で乗っていただけています(すべての事務所がそうとは限りませんのでご注意ください)。
問題がなさそうであれば申請をしていただき、無事申請が通れば、約 20~30 万円程度の費用を支払って完了です。
創業初期のベンチャー企業では捻出に悩む費用だと思いますが、ある程度売り上げが立っている会社であれば、確実に申請を行っておくべきでしょう。

おわりに

今回はサービスの名前の付け方を紹介しました。
アイディアの出し方というよりも、大人の事業として進めていくために必要な制約を主に紹介しました。
ドメイン商標登録はいずれも重要ですので、ぜひ気にしてみてください。
名前が決まれば、つぎはロゴのデザインに入り、どんどん面白くなっていきます。
このあたりは次の機会などで紹介できればと思います。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。