新規事業の発表と同時にメンバー募集の開始を発表した理由

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はじめに

fwywd では 5 月 17 日のリリースと同時に採用試験 を公開しました。
プロダクトが大きくなってからメンバーを集めるのが順当に見える中、プロダクトができていない中で、なぜ新規事業の採用を始めたのかを今回は紹介します。
これから新規事業を始めていきたいと考える人に役立つ情報があれば嬉しいです。

新規事業に訪れる2段階のハードル

今回の新規事業の位置付け

まず、今回の話の前提となる新規事業ですが、大きく分けて以下2つのケースが想定されます。
  • 使う技術は既存
  • 使う技術も新規
新規事業とは企業内で新しく取り組み始める事業のことを指すことは当然ですが、その実現において既存の技術で対応可能なもの(横展開など)とそうでないものがあります。
特に後者の使う技術も新規となると、2段階のハードルがあります。
キカガクの新規事業として fwywd を立ち上げる時に考えていた構想では「使う技術も新規」であり、今回の話はこちらを対象にします。
この領域+技術が二重で新規の場合にどのようなハードルがあるのでしょうか。

1段目:事業化のハードル

まず事業化にあたり、拡大の前に小さなチームでも売り上げなどの指標をクリアしていくことが前提となります。
新規事業では新しいことに自由自在に挑戦できるように思えるかもしれませんが、自由度が高すぎてどこから手をつけ始めて良いかわからなくなります。
そのため、撤退のラインを引いたり、事業領域の幅を制限したりして、ある程度の制約をもとに進めていく方がうまくいきます。
また、指標を追うと言いつつも、感情面の問題もありますし、実際にどのくらいで結果が出てくるのか予想がつかないことも多くあります。
そういった場合に事業化のハードルを超えるために設定しているのが『最悪のケースで得られる結果』です。
新規事業を始める時に『最高のケースで得られる結果』を描く人が多いですが、それよりも『最悪のケースで得られる結果』を想定しておいた方が遥かに楽です。 今回の本題からずれるため深入りは避けますが、fwywd では以下のように設定しています。
  • 最高のケース
    • コンテンツマーケティングから人材育成や事業化の支援ができるプラットフォームの構築
  • 最悪のケース
    • キカガクでこれから力を入れたいプロダクト開発に関する知見が貯まる
失敗してもメインで行っている事業に対して手土産を持って帰ることができるのであれば、それは事業を閉じたしたとしても成功だと思って良いのではないでしょうか。

2段目:拡大のハードル

今回の本題である採用試験を最初に公開した理由に通じるのがこちらです。
ある程度、事業が順調に進み、定めていた KPI をうまくクリアすることができれば、チームメンバーを増やし、さらにレバレッジをかけていきます。
特に、シリーズ A の基準がわかりやすいと思いますが、プロダクト型(特に SaaS 型)のビジネスで、費やしているコストに対して売り上げが上回ったのであれば、資金をとにかく注入する合図です。
弊社の話で言うと、昨年にリリースした キカガク (kikagaku.ai) がちょうどこのラインを超えており、これから急拡大させるために本気の体制を作っていくぞ!と意気込んでいます。
では、実際にキカガクの開発チームでメンバーを順調に集めることができているかというと、実はそうではありません。
応募が少ないと言うわけではなく、少なくとも 50 人以上は応募していただいたのですが、いまだに本採用に至ることはなく、どうすれば望ましい人材に巡り会うことができるかと社内で頭を抱えています。
決して環境が悪いわけでもなく、リモートワークも OK、複数人チームでの開発体制もそれなりに整い、CTO がプロダクトにフルコミットしており、比較的働きやすい環境かと思います。
しかも、キカガクはほぼ全員がプログラミングができる会社なので、エンジニアにとっては文化的に理想的な面も多いはずです。 不採用の理由を聞いてみると、熱量が高く良い人が多い一方で、少人数で進めているプロダクト開発チームに入って即戦力とはまだ難しいということでした。
ここから問題点をもう少し深堀りして考えます。
キカガク (kikagaku.ai) の開発チームでは新しい開発の手法を取り入れるために Vue.js/Nuxt.js (fwywd は React/Next.js) を取り入れて開発を行っており、まだこの分野を実務レベルで取り組んでいる人がそう多くはないのです。
新しい領域に手を出すと言うことは、(個人レベルでは)多少の学習コストを乗り越えることができれば最も効率の良い方法で開発ができる一方で、チームとして考えた時にその熟練したレベルに全員が到達していないと効率の良い開発が行えないのです。
さらに、この新しい技術をベースに1年以上フルコミットでプロダクトを開発してきたメンバーに対して、週末に勉強していますといったレベルの人が同じレベルで働くことは到底難しいと言うわけです。
時間が経つ(チーム内の熟練度が高まる)につれて、この実力の乖離が大きくなってしまい、より採用が難しい状況となります。
ちなみに、新しい技術を使わずに、ある程度落ち着いて普及している技術(例えば、Ruby on Rails など)であれば、実務経験が豊富な人が多く存在するため、この乖離が生まれにくいです。
最初に『使う技術も新規』で分岐した背景には上記のような体験談があったわけです。
Ruby on Rails はもう古い!といった意見もネットでたまに見かけますが、急拡大に対応することを前提とすると、そのぐらいがちょうど良いのかも知れません。

採用ファーストという手法

急拡大までのタイムラグも活用

この新しい技術を取り入れた新規事業の難しさを痛感しつつも、新しいことには当然挑戦して切り開いていきたいという思いは変わりません。
とくに、fwywd チームを含めたキカガクは教育の会社として誇りを持っており、他の人がスムーズに学べるように、先に色々な困難に立ち向かっていく必要があります。
これからは日本の中でも新規事業の推進が進み、新しい技術を取り入れていきながら進めたい企業も多いはずです。
そこで、今回 fwywd から提案する方法が採用ファーストです。
まず、この方法では、ある特定期間後に KPI が達成されていき、チームメンバーの急拡大が求められ始めるという期間を設定します。
1ヶ月後であれば正直厳しいのですが、fwywd のチームはチーム結成時に1年後と定めました。
したがって、それより早く成長したとしても、それまでは最初のチーム構成(2人)で歯を食いしばって頑張っていこうと決めます。
つぎに、その特定期間後に欲しいチームメンバーの数と能力を書き出します。
ここは予想であるため厳密さは重要ではありませんが、1年後の成長時期にどのような状況にあるのかの解像度が高ければ高いほど、良い方向に進みやすい気がします。
この期間の間に事業を進めながら、同時並行的に欲しいタイミングで採用ができるように仕込んでいくことが鍵となります。

どうすれば未来への解像度が高まるのか

少し余談ですが、私もキカガクを創業して5期目ですが、動きはじめに解像度が低かったことは動き始めても解像度は低いままだったという経験があります。
その一方で、動きはじめに解像度が高いとやはりフィードバックが適切であり、目指した方向にいち早く向かうことができました。
では、この動き始めの解像度の高さは鍛えられるかというと当然思考力には依存するのですが、類似の経験を経ているかが一番大きいです。
思考するというよりも、以前の成功や失敗の情報を整理し、現在のプロジェクトの進捗を適切に把握できるかです。
したがって、新規事業が初めての人よりも経験者の方が軌道に乗せるのは当然うまいわけです。
私が楽観的過ぎるのかも知れませんが、新規事業が初めての人は、そこまで張り切りすぎず、失敗も含めて次回の成功のための経験であると冷静に情報整理を進める程度で良いと思います。

望ましい人物像から逆算して設計

本題に戻ると、必要な人材リストを作成できれば、あとはその人材を特定期間後(たとえば1年後)にどのように採用するかを考えます。
ここで、fwywd チームの話では、React/Next.js に加えて Tailwind CSS や、クラウドで Microsoft Azure を使ったり、フロントエンドやバックエンドの基礎知識から実践経験まで押さえている人を1年後に採用したいと決めました。
ただし、現実的にそのような人材が偶発的に生まれてくるとも思いませんし、まだプログラミングスクールでもなかなか触れられない(新しいがゆえに就職先が少ない or コンテンツ制作の難易度が高い)ため、そこから学んでプロになる人が生まれてくることも期待できません。
他力本願では fwywd チームが定める望ましい人材に出会うことができないのであれば市場に生み出す役を買ってでよう! となったわけです。
もともと領域こそ機械学習でしたが、コンテンツ制作を得意としているため、まずは自分たちで勉強しながら情報を整理していき、どのような能力が必要かといったディスカッションを重ねて骨組みを設計していきました。
そこから具体的なテストの内容を詰めていき、ワイヤーフレームワークの設計、デザインの完成、そして、fwywd のページを作成して公開という流れに至りました。 技術調査が約3ヶ月、テストの作成と fwywd の実装を同時並行で約2か月行い、合計5ヶ月ほどでリリースに辿り着くことができました。
こちらが公開した採用試験です。
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最悪のケースで最大の収穫を得る

5ヶ月も仕込みに時間をかけさせてもらっているため、その間に社内に React や Next.js など新たな情報を整理して解説記事を書いていたので、最初にお伝えした『最悪のケース』はクリアするようにもちろん心がけます。
キカガクでは機械学習 や Python を中心に紹介していましたが、今回の膨大な知見が溜まったことにより、最新の手法での Web アプリケーションの開発にも幅を広げられそうです。
また、実際にプロダクト開発を行ってみて情報が少ないと感じた領域はチーム開発に関してでした。
ひとりで学ぶための情報が多い中、実際にプロとして働くのであればチーム開発のお作法を習得していることは必要不可欠です。
その一方で、この領域の情報が私の目から見ても少ないと感じると言うことは、実際にチーム開発のお作法を習得した上で実務に臨めている人はまだ多くないのではないかと予想しました。
丁寧に教育してもらえるチームに入ることができれば正しく指導してもらえますが、教育の少ないチームに入ると見放されてしまいそうな気もします。
伸びているベンチャー企業はオンボーディングの内容やプロセスが明確化されているため、この情報が少なくてもどうにかなるかも知れませんが、知っておくに越したことはないでしょう。
この辺りも今後の取り組んでいきたい課題のひとつとして認識できたため、良い機会でした。

おわりに

欲しい時に動き始めても『時すでに遅し』

新規事業は時間との戦いです。
ビジネスとしては売り上げを出す必要もあります。
その一方で、人も集めないといけません。
採用した人のオンボーディングも必要となります。
『走りながら考えれば良いか』と思いがちですが、日々のことで体力が限界に近い中で、問題に遭遇してから対処できる体力が残っているはずがありません。
人数は常にギリギリです。
そんな中で新規事業を行うリーダーがどれだけ未来への解像度を高めて起きうる問題に対する仕込みを同時並行的に行えるかが重要です。
特に今回お伝えしたかったことはタイムラグをうまく活用することです。
採用したいときにうまく採用できないといった話は今回の文章を読んでいただいただけでも簡単にお分かりいただけたはずです。
こんな話はありふれています。
それでも、多くのケースで『優秀な人材が足りない』といったケースが起きているわけで、理由を聞いてみると同じような内容ではないでしょうか。
採用では、遅かれ早かれ明確な人物像の定義が必要となります。
これを後にするか、先にするか。
先に持ってくることでタイムラグを価値に変えることができるのではないでしょうか。
これから新規事業に取り組まれる方に少しでも役に立つ情報、もしくは当たり前の内容でも振り返りの機会となっていれば幸いです。
株式会社キカガク 代表取締役会長
吉崎 亮介
twitter: @yoshizaki_91

fwywd では開発メンバーを募集しています

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fwywd では採用試験を無料で公開しています。
採用への応募の有無を問わず、Web アプリケーションの開発を学びたい多くの方にとって有益な試験内容となるように設計しています。 ぜひ、fwywd の面白い採用試験を覗いてみてください。

キカガク (kikagaku.ai) の開発メンバーも募集しています

今回、話にもあがった キカガク (kikagaku.ai) の開発メンバーも絶賛募集しています!
キカガクのメインプロダクトとして開発を進めており、今が一番楽しい時期です。
記事でも書いたように多くの方から応募をいただいており、その中から良い人を厳選して、プロダクトと一緒に大きく育ってくれる方をお待ちしています。
実務経験は少なくとも、個人開発を進めているといった経験があれば大歓迎です。
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